Air Silk®
空気から生まれた革新的な繊維
大量生産による資源とエネルギーの大量消費、二酸化炭素の大量排出。細分化すれば、さらに多くの課題が浮き彫りになる衣服産業で脱炭素を図る方法は原料の変更、限りあるバージン素材(=新品素材)を使用しないことだと言われており、リユース・リサイクルはその対策の一環として取り組まれていると考えられます。とりわけ規模が大きいグローバルラグジュアリーアパレル、その市場においても脱炭素は最重要課題となっています。
Air Silk®は光合成生物、海洋性紅色光合成細菌が生み出すタンパク質をもとにつくられる、「原料の変更」を可能にするであろう繊維。化石資源に頼らず、無尽蔵にある二酸化炭素、窒素を資源にゼロエミッション・ゼロカーボンで生産できる土壌、海洋両方で生分解性がある新素材です。
クモの糸と同じファイバー構造をもつ人工シルク
Air Silk®を生産するためにまず、海洋性紅色光合成細菌にタンパク質が主成分となっている糸を出すクモの遺伝子導入を試みました。クモ糸は近年、その軽さや鋼鉄に匹敵するタフネスを有する天然繊維として注目を集めています。設計するにあたってリファレンスとしたのは、Symbiobeのファウンダー・CTOである沼田圭司をチームリーダーに、1000種を超えるクモのクモ糸がもつ物性とタンパク質構造などの情報を網羅的に集めた「Spider Silkome Database」という世界初のデータベースです。
遺伝子組み換えを行った海洋性紅色光合成細菌に海水条件下で光合成に適した光を照射し、二酸化炭素と窒素を固定させて大量培養します。その際に代謝されるタンパク質を抽出し、精製・紡糸したものが、クモ糸と同様のファイバー構造、シルクのような艶となめらかさをもつAir Silk®となります。
Air Silk®の製品化を推し進めるためのプロトタイプ第一弾として、京都の伝統的な絹織物である西陣織にAir Silk®をもちいた織物を制作しました。この事例は空気を資源とする繊維の実用、製品化が可能であることを証明しています。